2 平衡状態の変化h
【平衡移動の原理(ルシャトリエの原理)】
平衡状態はエネルギー的に安定した状態なので,平衡状態にない可逆反応は平衡状態になろうとする。平衡状態の可逆反応において,物質の濃度,温度,圧力などの条件を変えると,平衡状態がこわれる。そのため,この可逆反応では正反応や逆反応が起こって新しい条件での平衡状態になる。この現象を平衡移動という。
条件の変化と平衡移動の方向について,ルシャトリエ(仏の化学者,1850~1936)が,次のような平衡移動の原理を発表した。
「平衡が成り立っているときに,濃度,温度,圧力などの条件を変えるとその変化を妨げる方向に平衡は移動し,新しい平衡に達する。」
【濃度変化と平衡移動】
反応に関与している物質の濃度を高くすると,濃度変化を妨げる方向,すなわちその物質の濃度が低くなる方向に平衡は移動する。逆に,反応に関与している物質の濃度を低くすると,その物質の濃度が高くなる方向に平衡は移動する。
例) 3H2 + N2 ⇄ 2NH3
N2を加える ⇒ N2の〔 減る 〕方向〔 右 〕へ移動する
NH3を加える⇒ NH3の〔 減る 〕方向〔 左 〕へ移動する
【温度の影響】
平衡状態にある反応の温度を高くすると,温度を高くさせない方向,すなわち吸熱(ΔH>0になる)方向に平衡は移動する。逆に温度を低くすると,発熱(ΔH<0)方向に平衡は移動する。
例) N2O4 ⇄ 2NO2 ΔH=57.2kJ
加熱する ⇒ 〔 吸熱 〕の方向〔 右 〕へ移動する
冷却する ⇒ 〔 発熱 〕の方向〔 左 〕へ移動する
(ΔHは反応式の右に付けるので,この場合,N2O4→2NO2(右向きの変化)のΔHを示している)
【圧力の影響】
温度一定のもとで,圧力を高くすると,圧力が小さくなる方向,すなわち気体の総物質量が小さくなる方向に平衡は移動する。逆に圧力を低くすると,気体の総物質量が大きくなる方向に平衡は移動する。
例1)2NO2(g) ⇄ N2O4(g) 例2)H2(g) + I2(g) ⇄ 2HI(g)
2mol
1mol 1mol 1mol 2mol
例1) 加圧する ⇒ 総物質量が〔 小さく 〕なる方向〔 右 〕へ移動
例2)左右で総物質量が等しいので,圧力による移動はない。
例3)C(s) + CO2 ⇄ 2CO
固体 1mol 2mol
C(s)は固体なので,圧力変化には関係ないので考えない。
加圧 ⇒ 〔 左 〕へ移動, 減圧 ⇒ 〔 右 〕へ移動
例題 次の反応が平衡にあるとき,( )内の条件変化により平衡はどう移動するか。右,左で答えよ。また移動しない場合は「×」と答えよ。
(1) NH3 + H2O ⇄ NH4+ + OH- (NaOHを加える)
(2) 2SO2(g) + O2(g) ⇄ 2SO3(g)
(加圧する)
(3) H2(g) + I2(g) ⇄ 2HI
(減圧する)
(4) 3O2 ⇄ 2O3 ΔH=285KJ (冷却する)
(5) CO + 2H2 ⇄ CH3OH (触媒を加える)
(6) C(s) + CO2(g) ⇄ 2CO(g)
(加圧する)
(7) N2 + 3H2 ⇄ 2NH3 (体積一定のままヘリウムを加える)
(8) N2 + 3H2 ⇄ 2NH3 (全圧一定のままヘリウムを加える)
(1) 左 (2) 右 (3) × (4) 左 (5) × (6) 左 (7) × (8) 左
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